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伸縮する時間



 "時間"と言ってもさまざまなものがある。時計が生み出す秒刻みの"時間"や、人類が積み重ねてきた歴史という"時間"など。しかし、ここで扱うのは伸縮自在な「時間」のことである。

 たとえばこのような経験はないだろうか。突発的な事故に遭い、一瞬周りの全てものがゆっくり動いているように見えたり、もっと身近な例を挙げれば夏休みが極端に短く感じられてしまったり。もちろん流れている時間は一定ではずなのにどうしてこのような、体感時間とでも言おうか、「時間」が伸び縮みでもするかのような現象が起こるのだろうか。

 まさか潜在的超自然的能力が無意識のうちに発動して時空間を狂わせている、わけはない。

 具体的例でどういう違いがあるのか比較して検証してみる。体感時間の違いはよく「楽しい時間は速く過ぎる」と言われたり、その逆だったりするのだが、実際のところは判然としない。そこで下に挙げる二つの例はどちらも楽しかった時間における、体感時間の長短の例を挙げた。

 このときの違いは、生活環境の違いにある。前者はネット社会というデータ化された情報のみの世界である。それに対し後者は旅先で見たもの、聞いたもの、匂ったもの、食べたもの、触ったものなど、アナログな知覚的情報を得ることができる。どちらが情報量が多いかと言えば、後者であることは間違いない。

 本当に情報量によって体感時間が伸び縮みするのだろうか。もう一つ例を挙げて検証してみよう。

 この例における違いは集中できたかできなかったかの一点のみである。これに前例の検証結果をあてはめてみると、勉強に集中できたときは情報量が少なく、集中できなかったときは情報量が多いことになる。

「おいおい、全く逆じゃないか」とすかさずツッコミを入れそうになった人もいるだろう。確かに勉強内容の情報量は前者のほうが多い。しかし、自分の経験をもとに考えてみて欲しい。勉強に集中できたときは前の道路を車が通ろうが、隣の犬が吠えていようが、誰かが部屋に入ってきて隣にコーヒーを置いていこうが(これは大袈裟だと思うかもしれないが、実際僕はPCの前に座っているときは有り得ることなのだ……)気づかない。それに対し勉強に集中できないときは手に持ったシャーペンを片手で弄びながら、ラジオから流れる音楽に耳を傾け、教科書の隣にあった雑誌をボーッと眺める……。情報量は明らかに後者のほうが多い。

 これで「時間」の伸縮は情報量の違いということはお分かりいただけただろうか。ではこのような割と長期的な"時間"ではなく、突発的な事故における一瞬の"時間"の場合も果してそうなのだろうか。これは少し違う要因が絡むので保留させてもらう。

 どうして情報量が多いと体感時間が長くなってしまうのか。体感時間というのはそもそも脳内で感じる時間のことであり、それは得た情報を脳が処理する時間、つまり脳の情報処理速度に比例する。

 これは頭脳をPCに置き換えた例を挙げると分かりやすいだろう。処理速度が等しい三つのタスクA、B、Cを処理させるとする。ただしこの場合、PCは同時に複数のタスクを並列して処理できるものとし、処理速度は一定とする。カッコ内には体感速度に当てはめた場合を記述した。

  1. 処理タスクAとBを実行した(標準状態)
  2. AとBを実行している途中でさらに処理タスクCを実行した(体感時間:長)
  3. 処理タスクAとBの処理が終了し、Cのみの処理となった(体感時間:短)

 この例を表にまとめると以下のようになる。

  処理情報量 処理速度 体感時間
処理1 標準 普通 普通
処理2 多い 遅い 長い
処理3 少ない 速い 短い

 それでは保留していた突発的な事故に遭った場合に話を戻すことにしよう。この場合は必ず体感時間は短い。すると上の例のように情報量は多いのだろうか。ここは推測の域を出ないのだが、突然の出来事に周囲の情報を把握しようとして、一気に多量の情報を処理しようとするためではないだろうか。何が起こったのか。どうすればいいのか。つまり、PCでInternet Explorer、PhotoShop、MS Word、秀丸エディタ、ソリティア、Windows Media Playerを起動し、さらにはDVDのリッピングを始めたのと同じようなものである。Windowsなら確実にOSごと落ちる……などという話を始めると話が大きく逸れて貴重な読者に見放されてしまうのでやめておくことにする。つまり脳がビジー状態になり、処理速度が落ちて周囲がゆっくり見えてしまう。


 このように同じ休日であっても過ごし方によって楽しい時間が長くなったり短くなったりする。たまにはチャット三昧ではなくて友達と街に繰り出してみてはいかがだろうか。


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